鉄路が紡ぐ、静かな物語

風に揺れる黄色い花。灰色の木肌に映える青い空。抜海駅は、日本最北の木造駅舎として、静かにその存在を主張している。南稚内駅から一駅南下したこの場所で、北海道の鉄道史は息づいている。
1924年の開業以来、抜海駅は宗谷本線の歴史を見守ってきた。かつては漁業で賑わう港町への玄関口として、多くの旅人を迎え入れた。今では一日数本の列車が行き交うのみ。しかし、その静寂が逆に、北海道の奥深さを物語る。駅名標の「ばっかい」の文字が、まるで時代を超えて訪れる者を待ち受けているかのようだ。

目の前に広がる風景は、季節ごとに表情を変える。春の柔らかな陽射し、夏の爽やかな潮風、秋の澄んだ空気、冬の厳しい吹雪。この駅は、北海道の四季の移ろいを、静かに、しかし確実に刻んでいく。